アミンの塩基性を下げて膜透過性を改善する

2011 年、Merck の MK2 inhibitor [論文]。下図左のスピロ-4-ピペリジン誘導体は caco-2 透過性が低く、経口吸収性がほとんどありませんでした。ミクロソームやヘパトサイトでの安定性は良いことから、経口吸収性がないのは膜透過性が低いためと推測。さらに膜透過性が低いのは塩基性が高すぎるためと考え、塩基性を下げるために窒素原子を隣へ移動しました。


すると、上図左のスピロ-4-ピペリジン誘導体は pKa=9.3 (実測) に対して、右のスピロ-3-ピペリジン誘導体は pKa=8.3 まで塩基性が低減。これは塩基性の窒素が電子求引性のピロール環に近づいたためとされています。これによって caco-2 透過性も 1nm/s から 34nm/s まで改善し、経口吸収性も担保することができたそうです。(片方の光学異性体は主活性を同程度に保持しています)

フッ素の ax/eq でピペリジンの pKa をチューニング のようにアミン近傍にフッ素を導入するのも定番ですが、アミンを電子求引基の方へ隣にずらすというのも面白い一手ですね。

[論文] "Discovery of selective and orally available spiro-3-piperidyl ATP-competitive MK2 inhibitors" Bioorg. Med. Chem. Lett. 2011, 21, 3823.
[関連] アミンの塩基性を予測する調整する (気ままに創薬化学)

気ままに創薬化学 2012年02月28日 | Comment(0) | ADMET・物性・特許

アミンの塩基性を予測する調整する

ホスホリピドーシス、hERG、膜透過性、構造活性相関などの観点から、アミンの塩基性を予測したり調整したりしたい場合も多いかと思います。今回紹介する文献 [論文] では、環状と非環状、窒素上の置換基、近傍の置換基 (アルキル基、フッ素、酸素、窒素、硫黄、カルボニル誘導体、芳香環) がアミンの塩基性に与える影響についてまとめられています。フッ素の ax/eq でピペリジンの pKa をチューニング で紹介したコンホメーションが与える影響についても詳しく書かれています。アミンの塩基性の予測や調整にご興味ある方は、目を通してみてはいかがでしょうか。

[論文] "Predicting and Tuning Physicochemical Properties in Lead Optimization: Amine Basicities" ChemMedChem 2007, 2, 1100.
[関連] アミンの塩基性を下げて膜透過性を改善する (気ままに創薬化学)

気ままに創薬化学 2012年02月13日 | Comment(0) | ADMET・物性・特許