下図、化合物 1 (Reparixin) は半減期が短いことが課題でしたが、イソブチル基をトリフラートにすることで大幅に半減期が改善されたそうです。アリールトリフラートの安定性が気になるところですが、化学的・生物学的に安定で創薬化学でも使えるとのこと。文献タイトルも "Aryltriflates as a Neglected Moiety in Medicinal Chemistry" [論文] とされています。
in vivo でフェノール (potentially toxic) とトリフルオロメタンスルホン酸に分解される可能性があるので慎重に検討したそうですが、ラット肝ミクロソームで 30 分インキュベートしてもまったく分解されず、ラット/ヒトのヘパトサイトでもフェノール誘導体はまったく検出されず、ラット BA は 100% でほとんど未変化体のまま排泄されたそうです。また、pH 3.5 や pH 7.4 では安定で、37 ℃ で 2 時間でも 99% の残存率でした (ただし、pH 9.0 では 25% の残存率)。
上記などの結果を受けて、アリールトリフラートは創薬化学ではあまり使われない構造だが、化学的・生物学的に安定であり、電子求引性の置換基としてリード最適化の選択肢となりえると結論付けられています。合成中間体としてアリールトリフラートを経由する場合などは、それも評価に出してみてはいかがでしょうか?
[論文] "Aryltriflates as a Neglected Moiety in Medicinal Chemistry: A Case Study from a Lead Optimization of CXCL8 Inhibitors" ACS Med. Chem. Lett. 2011, 2, 768.
アリールトリフラートを創薬化学に
気ままに創薬化学 2012年09月29日
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気ままに創薬化学 2012年09月10日
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