クリアしなければいけない副作用指標の 1 つに hERG 阻害作用があります。hERG は心筋の再分極を司るカリウムイオンチャネルで、これを阻害すると QT 延長による不整脈を引き起こしてしまうと言われています。つまり、hERG を阻害しない化合物を合成しなければなりません。意外と多くの化合物が hERG を阻害してしまうため、創薬化学者の頭痛の種になることもしばしばです。
では、hERG とは何の略でしょうか?
実は human Ether-a-go-go Related Gene の略です。Ether は合成化学者お馴染のエーテルのこと。a-go-go は実はアメリカのナイトクラブのダンスのことなのです。
hERGは、1960年代、William D. Kaplan (現在、カリフォルニア州ドアルテにあるCity of Hope Hospitaに在籍)により、ショウジョウバエにおいて見出されたether-a-go-go遺伝子のヒトホモログであることからhERG遺伝子と呼ばれる。この遺伝子に変異が生じたショウジョウバエをエーテルで麻酔すると、ダンスするように脚を震えさせたことから、カリフォルニア州ウエストハリウッドのナイトクラブ「ウィスキー・ア・ゴーゴー」において当時人気であったダンスにちなんでether-a-go-go遺伝子と命名された。[参考] hERG (Wikipedia)