ところで 2010 年 Merck からの報告で興味深いものがありました [論文1]。p38α MAP キナーゼ阻害剤の研究で、下図右の 2H-quinolizin-2-one 骨格の化合物は下図中央の化合物よりも LogD が低いというのです。ちょっと驚きではないですか?
Merck は 2006 年に 2H-quinolizin-2-one 骨格の合成法を確立していて [論文2]、その論文によると下図のような近隣化合物よりも実際に TLC や HPLC で高極性、そして高溶解性とのことです。構造式の下の cLogP 値は私が ChemDraw (ver8.0) で出した参考値です。
この驚くべき低脂溶性の由来ですが、下図左のような芳香族性に伴う内部電荷分離による大きい双極子モーメントのためだそうです。下図右は私が勝手に書いたものですが、pyridin-4-one と pyridin-2-one を比較すると 4-one の方が明らかに低脂溶性です。なので、2H-quinolizin-2-one 骨格は 4-one 効果と内部電荷分離効果の両方から大きな双極子モーメントをもち、その結果見た目以上の脂溶性の低さと溶解性の良さに繋がっていると思われます。
予想以上に低脂溶性の 2H-quinolizin-2-one 骨格、物性だけではなく構造自体の新規性も比較的高いですし合成展開やライブラリーに取り入れてみても面白いかもしれませんね。
[論文1] "Synthesis and biological activity of 2H-quinolizin-2-one based p38α MAP kinase inhibitors" Bioorg. Med. Chem. Lett. 2010, 20, 2765.
[論文2] "Synthesis of the 2H-quinolizin-2-one scaffold via a stepwise acylation—intramolecular annulation strategy" Tetrahedron Lett. 2006, 47, 5063.
酸性にすると、若干共鳴がイミニウムの方に寄って、
お水とか窒素とかが付加してもうて、
そのままパカパカと開いて、2位置換ピリジンへってことは???
芳香族だし、そんなに不安定じゃないかなあ。
論文を見た感じでは化学安定性も代謝安定性も問題なさそうですよ。私自身は扱ったことはないので詳しくはわかりませんが。・・・というか名前欄で遊ぶの止めてください。笑