アゾール系 NH の pKa は窒素数と比例関係 [補足]

先日投稿した アゾール系 NH の pKa は窒素数と比例関係 の補足説明です。補足は 2 点で両方とも下図に関するものです。


[補足1] 上図のペンタゾールのプロットに括弧が付いていますが、これはペンタゾールがこの直線に乗ると仮定した場合の pKa の値になります、つまり推定値です。窒素上が水素原子のペンタゾールは不安定で、詳しい性質はまだ明らかになっていないようです (pentazole-Wikipedia)。

[補足2] 上図の値は計算値ではないのかという指摘をいただきました。計算値だとすると計算方法のためにこのような相関になっている可能性があるので、考慮する必要があります。図の引用元は Handbook of Heterocyclic Chemistry, Third Edition という書籍で、基本的には説明もリファレンスも充実しているのですが、この図に関する説明部分にはデータが実測か計算かの記述はなく、なぜかリファレンスもありません (私の見落としでなければ)。

そこで、自分の手で実測値を使ってこの図の再現を試みることにしました。pKa (DMSO, 25℃) の値は、Acc. Chem. Res. 1988, 21, 456. から引用しました (Bordwell pKa Table にも書かれていますが、ピロール pKa=23.0、イミダゾール 18.6、ピラゾール 19.8、1,2,3-トリアゾール 13.9、1,2,4-トリアゾール 14.8、テトラゾール 8.2)。論文によると、これらの値は Bordwell 研で測定されたものだそうです (ただし、pKa の詳細な測定方法等までは確認していません)。これらをプロットすると下の図になりました。


すると先の書籍の図と同様の高い相関を再現することができました。ただし、溶媒や温度が違うためだと思われますが縦軸の pKa の値は少し異なっています。以上のことから、上の相関は実測値でも成り立つものだと考えています。もし何か問題点、お気づきの点などがあればコメント欄でご連絡ください。


気ままに創薬化学 2011年01月14日 | Comment(3) | 相互作用・配座・等価体
この記事へのコメント
先日質問させて頂いたものです
イミダゾールが塩基性ということはあの表からはピロールはイミダゾールより塩基性ということになります
ピロールの窒素は孤立電子対が芳香環の中に入ってるのでさほど塩基ではないとききますがピロールはそれでも塩基性なのでしょうか
なぜ塩基性なのかも詳しく教えて頂けると助かります。
度々質問申し訳御座いません。
Posted by at 2011年01月18日 03:05
ちょっと誤解されているようです。記事タイトルにも書きましたが、グラフはアゾール系化合物の NH の pKa です、つまり塩基性度ではなく NH の酸性度のグラフです。グラフから言えるのは、イミダゾールの NH はピロールの NH よりも酸性度が高いということです。塩基性については仰るとおり、ピロールは塩基性ではありません。
Posted by 気ままに創薬化学 at 2011年01月18日 15:22
勉強になりました
どうも丁寧にありがとうございました
Posted by at 2011年01月19日 23:26
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