新しい脱酸素的フッ素化試薬


水酸基をフルオロ基に、カルボニル基をジフルオロ基に、といった脱酸素的フッ素化反応 (deoxofluorination)。現在最も広く使われている脱酸素的フッ素化試薬は DAST や DeoxoFluor かと思います。しかしながらこれらの試薬は液体で、水分や熱で分解しやすく、腐食性や爆発性があるという問題点がありました。これらの問題を解決すべく、2010 年に新しい脱酸素的フッ素化試薬が報告され、それらが市販されました。上図右の XtalFluor と FluoLead。

XtalFluor と FluoLead の特徴を以下に簡単にまとめてみました。個人的な印象としては FluoLead の CO2H → CF3、OH → OC(=S)SMe → OCF3 の変換が可能なあたりが魅力的な感じです。興味を持たれた方は、具体的な反応例や操作なども含めて論文をご参照ください。

XtalFluor
[利点] 固体で取り扱いやすく、DAST や DeoxoFluor に比べて安定性も高まっている。
[利点] DAST や DeoxoFluor に比べて脱離反応とフッ素化反応の比が良い傾向。
[欠点] DBU, Et3N・3HF, Et3N・2HF などの促進剤の添加が必要。
[入手] Aldrich などで購入可能、-E: 14500円/5g、-M: 24000円/5g。
[論文] J. Org. Chem., 2010, 75, 3401.

FluoLead
[利点] 固体で取り扱いやすく、DAST や DeoxoFluor に比べて安定性も高まっている。
[利点] 吸湿分解しにくい (グラフィカルアブストラクトは試薬を水に浮かべる写真)
[利点] DAST や DeoxoFluor、XtalFluor に比べて脱離反応とフッ素化反応の比が良い傾向。
[利点] CO2H → CF3、OH → OC(=S)SMe → OCF3 も可能。Supporting Info にも反応例あり。
[入手] TCI などで購入可能、21900円/5g。
[論文] J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 18199.

ちなみに従来試薬のお値段は DAST が 12000円/5g、DeoxoFluor が 11400円/5g なので、新試薬もそれほど値段は高くない気がします。脱酸素的フッ素化をやる機会があれば試してみてはいかがでしょうか。

[関連1] フェノール類のフッ素化試薬 PhenoFluor 発売 (気ままに創薬化学)
[関連2] 芳香族フルオロ/トリフルオロメチル化反応 (気ままに創薬化学)

気ままに創薬化学 2011年02月01日 | Comment(2) | 合成化学
この記事へのコメント
さまざまな利点から、企業では今後FluoLeadがよく使われるようになる
のではないかという気がします。
ただ、社内でFluoLeadを使ってみたところ、目的物は得られず、
DASTでは得られるという結果でした。
FluoLeadも万能というわけではないようです。

又聞き情報ですが、Xtalfluorは「くりすたるふろー」と読むそうです。
Posted by chemko at 2011年02月01日 23:10
chemko さん、いつも有用な情報ありがとうございます。FluoLead でいかない反応もあるとのこと、注意が必要ですね。しかし逆に DAST では行かない反応で FluoLead では行くものもあるはずで (例えば CO2H → CF3、OH → OC(=S)SMe → OCF3)、ユーザーとしては選択肢の幅が広がって良いですね。上手く使い分けできるようになりたいものです。

ちなみに私の会社の先輩も 「くりすたるふろー」 と言ってました。「Xmas でクリスマスと読むのと同じ」 と教えてもらって妙に納得しました。
Posted by 気ままに創薬化学 at 2011年02月02日 22:10
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