
まず、ピペリジン上のメチル基をフルオロエチル基に変換することで pKa は 8.8 から 7.6 まで低下し Pgp も改善しましたが モノフルオロエチルアミン構造のリスク で紹介したとおりモノフルオロ酢酸生成による毒性が出てしまいます。次に、ピペリジン上のメチル基をシクロプロピル基に変換することで pKa は 7.5 まで低下し Pgp も改善しましたが 反応性代謝物のアラート構造、回避へ向けた構造変換 の文献でも紹介されているシクロプロピルアミン由来の反応性代謝物が出てしまいました。
さらに、フッ素をピペリジン環上に導入した化合物をエナンチオマー含めて 4 つ合成。より活性の強い方の cis と trans のアイソマーが上図右の 2 つです。このとき、アキシャルにフッ素をもつものは pKa=7.6、エカトリアルにフッ素をもつものは pKa=6.6。エカトリアルの方は pKa を下げすぎたのか活性がやや弱かったためアキシャルの方が臨床候補化合物に選ばれました。
ピペリジンのエカトリアルフッ素体の方がアキシャルフッ素体よりも pKa が下がるという知見は 1999 年の JMC にも報告 [論文] があり、汎用性のある pKa のチューニング法と言えるかもしれません。エカトリアルとアキシャルの pKa の違いについては、アキシャルの場合プロトン化された NH と CF の双極子が並行で逆向きだからと説明されています。気ままに有機化学の アキシャルに立つとき で紹介したコンホメーション変化と同じですね。
[論文] "Fluorination of 3-(3-(Piperidin-1-yl)propyl)indoles and 3-(3-(Piperazin-1-yl)propyl)indoles Gives Selective Human 5-HT1D Receptor Ligands with Improved Pharmacokinetic Profiles" J. Med. Chem. 1999, 42, 2087.
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