さて、まずは Merck の renal outer medullary pottasium channel (ROMK or Kir1.1) 阻害剤の報告 [論文1]。下図左の HTS hit は HPLC や NMR で良好な純度であることが示されていたにも関わらず、HPLC で再精製すると活性が消失してしまいまいた。LC-MS で詳細に調べると分子量 384 の微量不純物が見られ、この分子量から下図右の化合物を推定、実際に評価すると 100 倍の活性をもっていたそうです。つまり、下図左の化合物の活性は 1 %の微量不純物による活性だったのです。
次は Pfizer の kynurenine aminotransferase (KAT) II 阻害剤の報告 [論文2]。HTS hit として下図左の化合物が得られましたが、標品で再試験すると活性が大幅に減弱してしまったそうです。元の HTS のサンプルから微量不純物をクロマト精製し、構造を同定し、再合成し、評価したところ、下図右の化合物が活性本体であることがわかったそうです。
HTS hit に限らず、不純物が高活性を示すことはありえることなので気を付けないといけないですね。
[論文1] "Discovery of Selective Small Molecule ROMK Inhibitors as Potential New Mechanism Diuretics" ACS Med. Chem. Lett., 2012, 3, 367.
[論文2] "Discovery of Brain-Penetrant, Irreversible Kynurenine Aminotransferase II Inhibitors for Schizophrenia" ACS Med. Chem. Lett., 2012, 3, 187.
うちの研究所では擬陽性で終わってしまうのですが、こういう微量不純物の探索や同定という作業はよく行われるのでしょうか。