論文に挙げられている基質の一部を紹介すると下図のような感じ。
・ 電子求引基、電子供与基がピリジンやジアジンのどの位置に置換されていても大丈夫。
・ ケトン、エステル、アミド、アセタール、保護されたアルコールやアミン、ニトリルは許容。
・ ピリジン 2 位にクロロ基やブロモ基があっても置換されない。
・ カルボン酸やアルデヒドはアシルフルオリドに変換され、2-フルオロピリジンにはならない。
・ 3 位に置換基がある場合、2 位が優先的にフッ素化されるが、5 位フッ素化体が混ざることも。
・ キノリン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジンもフッ素化可能。
・ π 過剰系の五員環ヘテロ芳香環は反応が複雑化する。(五員環ヘテロ芳香環を含む基質はダメ)
この反応で得られるフルオロピリジンは、
・ 2 位のフッ素を種々の求核剤 (N、O、C) で置換可能。
・ 酸触媒で加水分解して 2-ピリドンに変換可能。
・ LDA で 3 位を選択的にリチオ化することができ、求電子剤でさらに修飾可能。
創薬化学では、合成困難な多置換ピリジンの合成や late-stage での修飾に使えるかもしれませんね。
[補記] 気になる点としては、Supplementary Materials に "All manipulations were conducted under an inert atmosphere with a nitrogen-filled glovebox unless otherwise noted. All reactions were conducted in oven-dried vials fitted with a Teflon-lined screw cap under an atmosphere of nitrogen unless otherwise noted." との記載がある点です。酸素や水に極めて弱い反応なのでしょうか?それとも通常の操作でも多少収率が落ちても反応は進行するものなのでしょうか?もし実際に試した方がいらっしゃれば、情報いただけると幸いです。
[論文] "Selective C-H Fluorination of Pyridines and Diazines Inspired by a Classic Amination Reaction" Science, 2013, 342, 956.
情報ありがとうございます!
基質は問題なく反応しそうなものでしょうか?
すでに読まれたかもしれませんが、続報が出ていました。
Synthesis and Late-Stage Functionalization of Complex Molecules through C-H Fluorination and Nucleophilic Aromatic Substitution
J. Am. Chem. Soc., 2014, 136 (28), pp 10139-10147
DOI: 10.1021/ja5049303
論文が本当だとすると、アセトニトリルの水分含量、AgF2の純度などによる影響でしょうか。
うーん、多少収率悪くても反応自体は進行するものかと思ってましたが…。
late-stage でこの反応を組み込んだ合成計画を立てるのは怖いですね。