スルホン → スルホキシイミンで溶解度改善

先週は DABSO を用いたスルホンアミド・スルホンの合成 を紹介しましたが、スルホンはときに結晶パッキングを強固にし溶解度低下につながることがあります。例えば、単結晶構造をもとに溶解性を向上させる の [論文1] がそのケースに相当します。

今回紹介する AstraZeneca の報告 [論文] によると、スルホン化合物で溶解度が悪い場合には、スルホキシイミンにすることで溶解度改善が期待できるそうです。例えば、下図のような化合物でスルホンを NH スルホキシイミンや NMe スルホキシイミンにすることで溶解性が大幅に改善しています(特に NMe スルホキシイミンでは logD はほとんど同じにも関わらず)。



スルホキシイミン構造をもつ臨床化合物として、スルホキシイミンを創薬化学に で紹介した BAY-100394 に加えて AZD6738 が論文中で挙げられています。また、創薬化学向けのスルホキシイミンを含むビルディングブロックの合成法が記述されています(というかこの論文の主題はスルホキシイミンビルディングブロックの合成法です)。

スルホン → スルホキシイミンの展開、(特に溶解度が悪い場合)試す価値があるかもしれません。

[論文] "General synthetic strategies towards N-alkyl sulfoximine building blocks for medicinal chemistry and the use of dimethylsulfoximine as a versatile precursor" Tetrahedron 2014, 70, 6613-6622. (DOI: 10.1016/j.tet.2014.06.120)

気ままに創薬化学 2014年12月15日 | Comment(0) | ADMET・物性・特許

イミダゾピリジノンの TDI を7位の変換で改善

2014 年 BMC より、アステラス製薬の PDE10A inhibitor [論文]。下図のイミダゾピリジノン化合物(X=CH)で CYP3A4 の TDI(time-dependent inhibition)が問題となりましたが、7位の炭素を窒素に変換(X=N)あるいは7位にメチル基導入(X=CMe)によって TDI を改善できたそうです。類似の骨格で TDI が課題になった場合は試してみてはいかがでしょうか。



[論文] Chino A, Masuda N, Amano Y, Honbou K, Mihara T, Yamazaki M, Tomishima M. Novel benzimidazole derivatives as phosphodiesterase 10A (PDE10A) inhibitors with improved metabolic stability. Bioorg. Med. Chem.. 2014; 22(13): 3515-26. doi: 10.1016/j.bmc.2014.04.023

気ままに創薬化学 2014年09月18日 | Comment(0) | ADMET・物性・特許

アミド、イソキサゾール、イソキサゾリン (1)

アミド結合をイソキサゾールなどのヘテロ芳香環に置き換えることは創薬化学の定石のひとつです。今回と次回の記事では、イソキサゾールからさらにイソキサゾリンに展開し、溶解度向上や配座制御につなげた例を紹介します。

今回は Merck の CRTh2 antagonist で、溶解度向上の事例です [論文]。下図最上段のアミド化合物ではアミド結合の加水分解が問題となり、アミド等価体のイソキサゾールにするも溶解度が低下してしまいました。そこで、平面性を崩すためにイソキサゾリンにしたところ溶解度が大幅に向上 (ラットの動態も良好)。イソキサゾリン環上のメチル基は、ベンジルオキシムエーテルの潜在的な酸化的代謝を防ぎ、また平面性を崩して物性の改善にも寄与することを期待したものだそうです。


以上、「アミド→イソキサゾール」で溶解度低下、「イソキサゾール→イソキサゾリン(+メチル基)」で溶解度向上、という事例の紹介でした。

[論文] "Quality by design (QbD) of amide isosteres: 5,5-Disubstituted isoxazolines as potent CRTh2 antagonists with favorable pharmacokinetic and drug-like properties" DOI: 10.1016/j.bmcl.2014.01.043
[関連] アミド、イソキサゾール、イソキサゾリン (2) (気ままに創薬化学)

気ままに創薬化学 2014年07月22日 | Comment(0) | ADMET・物性・特許

増炭して脂溶性が下がるケース (3)

増炭して脂溶性が下がるケース (1) では 『2つ環化するように増炭する場合』、増炭して脂溶性が下がるケース (2) では 『分子内水素結合を切るような形で増炭 (N-メチル化) する場合』 に脂溶性が下がることを紹介しました。それでは 『環化しながら分子内水素結合を切るような形で増炭する場合』 はどうでしょうか?

2011 年 JMC より、Pfizer の HIV-1 ntegrase inhibitor の報告 [論文]。下図左の化合物から一炭素増やす形で環化して配座固定すると活性が 2 桁向上し、log D が 0.65 も低下。脂溶性の低下に関しては、おそらく 「環化」+「分子内水素結合の切断」 のダブル効果によるものと思われます (私見)。


化合物のデザインコンセプト。活性配座を下図左のようにマグネシウムに配位したものと推定していましたが、上図左の化合物では立体反発・双極子相互作用・分子内水素結合の影響で推定活性配座とは異なる下図右の配座が最安定配座 (最安定配座と推定活性配座のエネルギー差は 5.9 kcal/mol)。そこで、推定活性配座に近づけるために、上図右のような環化による配座固定に至ったようです。


『環化しながら分子内水素結合を切るような形で増炭する場合』にも脂溶性が大きく下がる (こともある) ようですね。

[論文] "Design and Synthesis of Novel N-Hydroxy-Dihydronaphthyridinones as Potent and Orally Bioavailable HIV-1 Integrase Inhibitors" DOI: 10.1021/jm200208d

気ままに創薬化学 2014年03月06日 | Comment(0) | ADMET・物性・特許